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東京高等裁判所 昭和41年(う)2452号 判決 1967年2月24日

主文

本件各控訴を棄却する。

理由

原判決は、その判示一の1の(2)において、被告人が北村貞治、同国昭と共議のうえ、柳沢金次郎に現金一五万円を供与した旨を認定しているが、関係証拠によれば、柳沢は、原判示清美屋で北村国昭の手から現実に一五万円の現金を受領してはいるものの、それは、一五万円全額が柳沢の自由処分に委ねられるものとして供与されたのではなく、中込地区内の三支部、すなわち、中込、内山、平賀の三支部に、一支部五万円宛てという話合いの上で合計一五万円が事実上一括して柳沢に手渡されたのであつて、被告人および北村貞治においても、また、もとより右国昭の手を通じて平賀支部長たる柳沢に原判示趣旨で五万円を供与するとともに、同人をして他の二支部の代表者らにそれぞれ五万円づつを同趣旨で供与させるために、右五万円に加えてさらに一〇万円を同時に同人に交付したもので、柳沢もこれを了解して、自己の受供与分五万円を合わせて一括一五万円の現金を受領した経緯である、と認められるのである。したがつて、原判決はこの意味で事実を誤認しているものというべきであるが、それにしても、右一〇万円の交付は、結局のところ、供与罪と同一法条下に規定している交付罪に該当することになるから、この程度の事実誤認は、本件犯行の回数、態様、金額等全体の規模からみても未だ判決に影響を及ぼすことが明らかなものとまではいえないから原判決破棄の理由となすに足りない。

(その余の判決理由は省略する。)(樋口勝 小川泉 金末和雄)

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